第11章 天空闘技場 約束
「お見事」
自分以外に誰もいないはずの部屋に他人の声が響いた。しかしルカは驚きもせず、ゆっくりと振り向き、ドアの内側に立つ侵入者に向けて、微笑んで見せた。
「ウイングさん」
「まいったな。私の絶に気付いてましたか」
「私、オーラを感じるのはの得意だから」
にっこり笑った顔は年相応の少女そのものだが、ウイングにはもう只の少女には見えていない。
「他にも得意な事がありますね?
例えば……
念が使えないふり、とか」
眼鏡越しのウイングの目がルカを捉えて鈍く光った。
そう、ウイングは最初、ルカが念能力者だと気付くことが出来なかった。3人を止める為、200階に駆け付けた時、初めてそれと知った。
あの禍禍しいオーラを弾き返して余りあるオーラ。彼女が能力者であることは、破壊された壁が雄弁に語っていた。
「うん、使えないふりも得意。
でも、ウイングさんは見破るの得意じゃないでしょ?だから私の『ふり』が見破れなくて当然かも」
「……これでも師範代ですから、当然と言われてしまっては立つ瀬がない」
ウイングは苦笑いで眼鏡を指で押し上げる。そして、一呼吸おき、この部屋へやって来た本題を口にする。
「しかし、貴女が能力者ならば、あの2人に念を教える事も出来たのではありませんか?」
「う……いや、初めは教えようとしたんだけど……私、誰かに教えるのは得意じゃなくて。ぜんぜん上手く説明出来なくて……」
「なるほど」
途端に慌てるルカの様子に、ウイングは納得しかけた。
納得しかけたのだが、
続く言葉に、己の耳を疑った。
「私、生まれた時から念を使ってるからー……」
「!」