第10章 天空闘技場 200階の壁
2時間後ー……
200階フロアの破壊された壁の前。
片膝を立てて座るヒソカは、弄んでいたトランプから正面のエレベーターへ目線を移した。
(……期待通りだ♥)
そこに立つのはゴンとキルア、そしてルカ。
拙く荒削りではあるが、可能性を孕んだ力強いオーラを彼等から感じ、ヒソカは浮かび上がる笑みを噛み殺す。
先刻は前進することすら儘ならなかったゴンとキルアだが、今は2人とも難なく通路を進んで来る。
ウイングがゴンとキルアの精孔を開き、更に纏を教えたことにより、ヒソカのオーラを防ぐことが出来ていた。
「ようこそ200階クラスへ♥
洗礼は受けずに済みそうだね◆」
己の眼前まで進んできた青い果実に向かって、ヒソカは目を細めて歓迎の言葉を吐く。ゴンとキルアの後ろから、その言葉を聞いていたルカは顔をしかめた。
2人の為みたいに言っているが「お気に入りの玩具を壊すなら自分の手で」という事なのだとルカは知っている。
「くくっ、ルカもイイ顔だ♥」
「うるさい、変態」
ヒソカが軽口を叩いても、応酬するルカの声は低く、眼光は鋭いまま。2時間前、この場所でやりあった余韻は消えていないようだ。
「おい、ルカに絡むなよ」
言葉を投げたのはキルア。同時にゴンもヒソカとルカの間に身体を入れる。ルカが何か言う前に、2人の背中でヒソカの顔は見えなくなった。
少女をかばって睨み付けてくる2人に、ヒソカは興醒めしたと言わんばかり、肩をすくめて立ち上がった。
「纏を覚えたくらいでいい気になるなよ♣
念は奥が深い♠
それと、ゴン♥
悪いが今の君と闘うつもりはない◆そうだな……200階クラスで1勝でもしたら、相手になろう♥」
それだけ言うと、あっさり背を見せて去っていく。思わずその後を追おうと動いたルカの腕を、ゴンが捕らえた。
「ルカ、先に登録しよう」
「……うん」
よく考えたら、2人がいるところでヒソカを問い詰めることは出来ない。
ルカはひとつ息を吐き、ゴンに従って受付に向かった。
(天空闘技場にいる間に、必ず問い詰める……!)
そう、心に誓って。
第10章 天空闘技場 200階の壁 ー完ー