第10章 天空闘技場 200階の壁
ドン…ッ!
ルカの両手が降り下ろされると、腹に響く低い衝撃音が鳴った。それは、彼女がヒソカにオーラの塊を叩きつけた音である。
衝撃で風と砂埃が舞い上がり、一時視界が奪われる。
「なっ……」
風が止み、ルカの背中越しに見えた光景に……ゴンとキルアは声を失う。
通路奥の壁が爆発したかの如く破壊されている。
化粧壁は剥がれ落ち、内側のコンクリートがむき出し。更にコンクリートは深く抉れており、バラバラになった破片が床に転がる。特にヒソカが座っていた辺りの破損は酷く、一部鉄筋すら見えるほどだ。
素手でここまでの威力とは……
((これが……『念』!))
「いきなり酷いなぁ◆」
「「‼」」
目の前の光景からしてみれば、暢気すぎるヒソカの声に、ゴンとキルアは再度目を見開く。
これだけの攻撃を受けたというのに、ヒソカは元いた場所から一歩も動いていない。流石に立ち上がってはいたものの、余裕綽々、肩周りの埃を払っている。
(……バケモノかよ?!)
「ヒソカも念で防いだんだよ。だから無傷、……でもないか」
無言で驚いているゴンとキルアに声をかけたルカだが、すぐに正面のヒソカと向き合う。
「男前になってるよ?」
そう言って、ルカは自分の右頬を指差す。
ヒソカは示された己の頬を親指で擦り、僅かに血が滲んでいることを知る。纏でガードしたはずのヒソカの肌に傷を付けたのであれば、それはルカのオーラがヒソカのそれを凌駕したことを示す。
ククッ、とヒソカは笑みを深くする。
「相変わらず君も旨そうだ◆」
しかしそこまで言うと、表情を一変させる。
「だが、君が彼等に念を教えるのはいただけないな♣
君、教える方はからっきしだろ?」
バゥッ!
再びヒソカの凶悪なオーラが3人に向けて発せられる。身構えたゴンとキルアだったが、ルカのオーラに守られ、先程までの圧迫感は襲ってこない。だが……
「いきなりヒソカのオーラを喰らうよりは、マシだと思うけどっ?」
負けじとルカも練を行う。
ブォッ…!
「「……っ!」」
再度高まる圧迫感に、ゴンとキルアが顔をしかめた、その時。場にそぐわない冷静な台詞が聞こえた。
「無理はやめなさい」