第10章 天空闘技場 200階の壁
ゴンとキルアが後退したのを確認し、ヒソカはゆっくりと腰をおろす。そこは通路の奥のど真ん中。
「出直したまえ♣とにかく今はまだ早い◆」
「っ、ざっけんな!
せっかくここまで来たのに……」
訳の分からないまま相手のいいようにされ、キルアが抗議の声を上げる。が、その台詞を最後まで投げつけることは叶わなかった。
すぅ、と再びヒソカが手をかざした、ただそれだけなのに……
ズ、ズ…ウゥゥ…ン
「……‼」
更に殺気が濃度を増し、通路全体の空気が重くなる。
「通さないよ♠っていうか通れないだろ?」
「「ぐっ!」」
ヒソカの言葉通り、ゴンとキルアはその場から一歩も動くことができない。強まった圧力が容赦なくのし掛かり、全身から冷たい汗が吹き出す。前に進むどころか、この場に留まっていることさえ、辛い……!
(これは、一体なんなんだ?!)
正体の知れぬ力を前に、圧倒されそうになった……その時。
パンッ
乾いた破裂音が響いた。
すわ攻撃か、とゴンもキルアも片膝を立てて座るヒソカを改めて注視したが、眼前の奇術師は2人を見てさえいなかった。彼はこの場にいるもう1人に顔を向け、爛々と目を輝かせながら、ゆっくりと口角を上げていく。
「あぁ、やっぱりイイ……♥」
「‼」
ヒソカの視線の先、ゴンとキルアの斜め前辺りには……
「「ルカ!」」
ルカがいた。
破裂音はルカがヒソカのオーラを弾き飛ばした音だったようで、身体中にまとわりついていた凶悪なオーラは宙に霧散し消えている。
さらり、と長い黒髪が動き、ヒソカと正面から向かい合う位置に移動する。自然、背中にゴンとキルアを隠す格好になったところで、ルカはヒソカに顔を向けたまま口を開いた。
「ウンチク聞くよりも、身体で感じた方がよく解るでしょ?」
「?」
少女の言葉が理解できず、ヒソカは片眉を跳ねあげる。
その一瞬の間、
数m離れた場所に座るヒソカに向け、両の手のひらをかざすと同時、ルカは声を張った。
「これが、念だよ!」
「‼」