第10章 天空闘技場 200階の壁
(……3人とも素晴らしい才能の持ち主だ)
昨夜、自室に招いた子供達を思い、ウイングは柄にもなく興奮していた。ズシと出会った時も沸き立つものを感じたが……その比ではない。
もし彼等が念覚えて、更に使いこなすまでに至ったならば……その可能性を思わない訳にはいかなかった。
(いずれにせよ、彼等ならすぐに気付いてしまうだろう。……私の方便に)
真実を伝えないのには、当然理由がある。
念は努力次第で誰でも修得できる。だからこそ、教える者は相手を選ばねばならない。
ウイングはズシに修行をつけながら、彼等の動向を見守っていくつもりだった。
しかし、
「彼等がもう200階に?」
「はい!やっぱりあの3人はすごいっす!」
「うーん、仕方ない……」
「?」
小首を傾けて見上げてくるズシに纏(テン)の行を言いつけ、ウイングは天空闘技場へ向かう。
取り返しのつかぬ傷を受けるには……彼等は若すぎる。
「どんなところかな、200階は」
「さぁな、俺もここからは行ったことないからな」
「もう少し強い相手がいると良いね」
エレベータで運ばれ、軽口を叩いていたゴン、キルア、ルカは何の障害もなく200階に到着した。
……しかし受付へ進もうと、フロアへ足を進めた途端、
異様な気配を察知して口をつぐむことになった。
3人を吐き出したエレベータの扉がゆっくりと閉じていくが、その僅な間にも、ゴンとキルアは全身に冷や汗を感じていた。
ズ、
ズ、
ズズズ……
密林の中、魔物が地を這うような、得体の知れない空気。それが、眼前の通路の奥からルカ達に向けて放たれている。
ゴンはゾクゾクと総毛立ち、思わず釣竿を握る手に力をこめる。
ぎり、と唇を噛んだキルアは、無理矢理に前進しようと重い足を引きずる。
「……ぐっ」
しかし、進むほどに強まる殺気の塊に、2人の足は再び床に縫いつけられる。
ズ、ズ、ズズ……
見えない圧力。
ゴンとキルアには見えないソレをルカは良く知っている。
これは念だ。
しかし……百戦錬磨の使い手であろうと、このまとわりつくような不快感には眉をひそめるだろう。癖のあるオーラ、という一言では語れない毒々しさ。
……こんなオーラの持ち主は、この世にただ独り。