第10章 天空闘技場 200階の壁
「ルカさん、おでこ赤く腫れてるっすよ!」
闘技場から選手控え室を繋ぐ廊下。
久しぶりに会ったズシは開口一番、ルカの額を見て驚きの声をあげた。
「ルカさん、試合ではいつも相手に髪の毛一本触らせないっすよね?誰にやられたんっすか?!」
「あー…コレは2人にデコピンされて」
「?!」
左右のゴンとキルアを示すと、ズシは目を白黒させる。
「それより、聞きたいコトがあるんだ」
無理矢理に会話を軌道修正したキルアは、「レンって何だ?」と、単刀直入に切り出した。意外にもズシは戸惑うことなく質問に答えてくれた。
が、しかし……
「レンはヨンタイギョウの1つっす!
テンを知り、ゼツを覚え、レンを経て、ハツに至る。要するに、これら全てネンの修行っす」
「「「??」」」
「ズシ!
貴方はいつから人に教えられる程、物を修めたのかな?」
「うっ」
ルカ達が頭に?マークを飛ばしている間に、どこからともなく現れたウイングがズシの口を閉じてしまう。
そして、にこやかな表情のまま、ルカ達に向けても釘を刺した。
「3人とも、昔の訓辞に『物事とは中途半端に知ることで、何も知らないより分からなくなる』とあります」
(……物腰柔らかに見えて頑固。これは手強い、かな)
ルカは一瞬考えを廻らせ、1歩前に足を動かそうとした。が、腕を出してそれを制したのはキルアだ。
何を、と目で問えば、瞳で笑って任せろと言う。
「生兵法は大怪我の元ってヤツね。
でも、俺は今知りたいんだよね」
いつもの調子で話すキルアだが、ここでスッと会話の温度を下げる。
「ソレは兄貴の強さの秘密にも繋がるから……!」
「……君のお兄さんも念を使う訳か」
「ああ、だから今教えてよ。
俺だって半端はゴメンだ。あんたが教えてくれれば、下手に我流で覚えようとはしないよ」
暗に、教えてくれなければ我流であろうと必ず自力で突き止める、と騙る。
流石、イルミの話になると迫力が違う。
ゴンとルカはゴクリと喉を鳴らした。
「……分かりました。私の宿へ行きましょうか」
折れたのはウイング。
ルカ達3人はこっそりガッツポーズをしあった。