第10章 天空闘技場 200階の壁
寝転がっているといつまでもキルアに足蹴にされてしまうから、という訳ではないが、ルカはベッドから両足を下ろし、ゴンの隣に腰掛ける。
「上手く説明できないか、あれから色々考えてたんだけど……」
「やっぱり難しそう?」
「……『どうやって息してる?』って聞かれてる気分」
こりゃ駄目だ、とゴンとキルアは目で会話をする。
(駄目だこいつって思われた……!)
2人の心の声が手に取るように分かってしまい、ルカはガン!とショックを受ける。
そして、
何だか情けなくなってしまった。
念の事も教えてあげられないし、ゴンとキルアに「駄目だ」なんて思われちゃうしー……
「うぅ」
ルカは幾度目かの呻き声とともに、口をへの字にしてうつむいてしまう。
情けなさを滲ませるルカのつむじを見て、キルアは乱暴に自分の銀髪をかき混ぜた。
「あーもー!
仕方ないな~、コレでチャラな!」
「ごめんね、ルカ」
「え?」
キルアとゴンの言葉に、ルカはフッと顔をあげる。ー……と、
バチンッ!
風船が弾けるような音と同時に、ルカの身体がベッドに沈み込む。あまりに勢い良く倒れこんだ為、ベッドのスプリングも大仰に音をたてる。
「ッ、いたーーーっ‼」
ガバッと身体を起こしたルカは両手で額を押さえながら絶叫した。
ゴンとキルア、2人が同時にデコピンしてきたのだ!
「なななな、なにするの?!」
「何って、コレでお前が『ネン』を説明できない件はチャラな。あースッキリした!
っつーか、やっぱすげぇな、ルカ。俺、本気でデコピンしたのに」
血ィ出てないのな、とキルアは恐ろしいことを言って覗き込んでくる。隣から同様に覗き込むゴンは申し訳なさそうに眉尻を下げている。
「ごめんね、ルカ。
キルアがどーしてもけじめだって言うから」
「ルカばっか先に行ってるのも悔しかったしさ~。ま、コレでチャラだから!ほら、ズシんとこ行こうぜ?」
スツールから腰を上げたキルアを追って、ゴンがルカの手を引く。
「行こう、ルカ」
「……うんっ!」
ルカは涙目の顔を笑顔に変え、握られた手に力を込めた。