第10章 天空闘技場 200階の壁
「うぅ、ごめんてばキルア」
「はあぁ~あ」
ベッドの上からそろりと目をやると、そっぽを向いたキルアにわざとらしく溜め息をつかれてしまった。
「仕方ないなよ、キルア。
ルカは説明したくても出来ないって言ってたじゃないか」
「………」
あの日……
50階の試合でキルアがズシの構えに「すごく嫌な感じ」を受けた、あの時。
ルカは2人に念を見せた。
練をして、自身のオーラをゴンとキルアに感じさせたのだ。
「この力は念という。
イルミも、ズシも、私も、念を使う」
「ネン?
ズシの師匠はレンっつってたぞ?!」
「練も念の一種。念の基本中の基本」
「「……!」」
(これぞ「百聞は一見にしかず」作戦!
念はアレコレ説明するより実際に見て、体感するのが1番だもんね)
ルカはゴンとの約束にも、キルアの疑問にも、これで応えたことになる、と考えていた。
……が、コトはそう簡単にいかなかった。
「ネンって、どうやったら使えるようになるの?」
「レンの他にもネンってあるのかよ?」
「ルカはどうやって覚えたの?」
「ネンを覚えれば、兄貴と同じ技が使えるようになるのか?」
「俺達でも覚えられるものなの?」
「ネンの技を喰らうとどうなるんだ?」
「「……ルカ!」」
「え?! え、えぇ~っとね、確か精孔ってやつをね……」
矢継ぎ早に放たれる質問の数々に、結局ルカはほとんど明確に答えることが出来なかった。
「時々いるんだよな。見て学べ、盗んでみろっつーヤツ。それが出来れば苦労しないっつーの!」
「う」
「『グッと力を入れて、ドバーッて解放して、ピタッと、ね?』って何だ、意味分かんねぇよ!ミスターかよ‼」
「うぅ~」
ルカは情けない顔で呻き声を漏らすことしか出来ない。
それもそのハズ。
ルカは幼い頃から、幻影旅団の中で一流の使い手からオーラの扱いを学んできた。しかし、それらは全て文字通り身体で覚えたものだから、そもそもの概念となると……甚だ怪しいのだ。
そんなルカが2人に「念とは何か」を説明できるはずもない。
(だから教えられないって言ったのに~~っ)
ルカはゴンと不用意に約束してしまった己を恨んだ。