第10章 天空闘技場 200階の壁
なるほど。
選手控え室に向って歩きながら、ルカは心中で1人うなずく。
ここ、天空闘技場は修行にうってつけだ。
世界中から腕自慢が集まり、ランダムに試合が組まれる。対戦相手は多岐にわたり、様々なタイプを相手にすることができる。しかも、審判のジャッジで勝敗が決まるため、上手くやれば命を賭ける必要はないだろう。
(抜けて見えて、さすがは師範代。
ズシを伸ばすにはベストの環境ってことか)
楽しそうに会話をするズシ、それとゴンの背中を見て、ルカは眉をハの字に曲げる。
ズシとウイングを見ていて、困ったことを思い出してしまった。
(ど~しようかな。
ゴンに念を教えるって約束したの、思い出しちゃった)
困り顔のまま、指で頬をかくルカに、キルアが明るく声をかける。
「なーに変な顔してんだよ!
50階程度の相手ならまだ楽勝だよ。気楽に行こうぜ」
「まぁね、たぶんまた1発で勝てると思うけど」
「だろ?」
「お、お2人とも声が大きいっす……」
周りの選手の殺気めいた視線を感じ、ズシが苦言を呈する。とほぼ同時に呼び出しのアナウンスが響いた。
『ルカ様、ギヤール様、58階のB闘技場へお越し下さい』
「ルカ、頑張ってね!」
「60階のロビーで待ってろよ、俺らもすぐ行くから」
「ルカさん、ファイトっす」
ゴン、キルア、ズシの声援に手を上げて応え、ルカは控え室を後にする。
『ダウゥーーン‼
ギヤール選手起き上がれません。
前回の試合をデコピンだけで終わらせたルカ選手、ここ50階でも1発KOを決めました‼
手元の資料ではルカ選手はわずか11歳!
末恐ろしい少女が出現しましたー‼』
「ゴン!こっち」
「ルカ!勝ったんだね」
「もっちろん!」
早々に勝利を決め、60階のロビーでルカとゴンはハイタッチを交わす。
ルカの隣に腰を下ろしたゴンは、キョロキョロと周りを見回した。
「キルアはまだなんだね。
キルアの試合相手、ズシだったんだよ」
「!」
ゴンの言葉にルカは一瞬動きを止める。
(もしズシが念を使えば……)
「……キルアは時間がかかるかもね」