第10章 天空闘技場 200階の壁
キルアの言うところの「面白いモン」はすぐに見ることができた。
それはもちろん、Eのリンクで始まったゴンの試合のことで、その試合は数秒で決着した。
太鼓腹の大男に対峙したゴンは、相手の繰り出したパンチを避け、そのままの態勢から右手を真っ直ぐ突き出した。
要するに、男の立派な太鼓腹のど真ん中を、ただ片手で押したのだ。
するとー……
ッドン!
「「「!!!」」」
鈍い音と共に男の巨体が宙を舞い、別のリンクも飛び越えて、遠く観客席にまで飛んでいく。
ドオォォ……ン!
どよどよ……
まさかの結果に、フロア全体がざわつく。
ゴンを見かけ通りの子供と侮っていた観客も、対戦相手の大男も、そしてゴン自身さえも、意外な怪力っぷりに驚きを禁じ得ない。
「ふわ~、こんなに力がついてたのか」
ゴンは自分の力に戸惑いながらも、すぐに拳を握り込み、頭の上でブンブンと振って見せた。
そんなゴンに手を振り返しつつ、キルアは目だけをルカに向ける。
「ウチの試しの門をクリアしたのなら、あの位出来ると思ってな、やらせてみた。
面白いだろ?」
「うん、面白い!
もしかして、キルアも一発で決める気?」
「まぁな。
制限時間3分以内に最大限の実力を見せろ、っつー審査だから、これが1番効果的」
キルアは右手で手刀を降り下ろすジェスチャーを見せ、呼び出されたAのリンクに降りていく。
「お前も一発で仕留めろよ!」
そう言い残しながら。
ルカは自分の右手を見、片手でパキッと指を鳴らす。
(ゴンは押出し、キルアは手刀か……
よ~し!)
手加減しながら、力を隠しながら、素早く闘いを終わらせることはルカの十八番だ。
「2056番・2040番、Hのリンクへ」
番号を呼ばれ、ルカはスキップするように階段を踏む。
(最近頭ばっかり使ってたから、
ちょっとストレス解消しちゃおうかな~♪)
リンクには既に彼女の対戦相手が待っている。
数十秒後には気を失うことになる、可哀想な対戦相手が。