第2章 マーガレット
「そういえば、どうしてマーガレットなんだっけ?」
私はめぐみに尋ねた。千羽鶴なら、まだ簡単に折れそうなのに、何故難易度の高い(実際どうなのかは知らないが、私にとっては高そうだ)、マーガレットなのか。さっきからずっと気になっていたことだ。
「あたしが、委員会で提案したの。……まさか聞いてなかったの?」
「イエス」
だってそうだろう、真面目に聞くなんて馬鹿馬鹿しい。だから、いつも一生懸命働いている委員長、否めぐみの心理が分からなかった。
……分かる訳が無かった。
「……花言葉が、素敵だったから、だから、それにしたの。はるかに贈りたいと思って」
はるかに贈りたいと思って。
その言葉が、頭の中で繰り返される。
そうなんだ、と興味の無さそうな返事をした。けれど心の中はそれとは裏腹で、ずっと心に引っ掛かっている。めぐみの、言葉が。
私は、マーガレットの花言葉を知っていた。だからきっと、こんなにモヤモヤしているのか?だから、さっきの言葉が頭から離れないのか?
それは違うと思った。自分で、自覚していた。
「……薫?委員会で疲れた?さっきからボーッとしてるけど」
めぐみの声で、ハッと我に返る。いけない、やってしまった。
「……ん。大丈夫」
「そ。なら、早く帰ろう」
そう言うと、めぐみは歩き出す。私もそれに合わせる様にして、歩き始めた。
外から、カキーン、という音が聞こえる。
妬いていないと言えば嘘になった。けれど、妬いているかと聞かれればそうでもない。私には、分からなかった。自分は今何を考えているのか、自分がめぐみに抱いている感情は何なのか。
もうどうしようもなくなって、私は取り敢えず前に進む。