第10章 下忍の任務
「イタチ兄さん、その子、ちょっと貸して?」
「……?良いけど、逃がすなよ?」
イタチから忍猫を受け取ると、ルナは忍猫をそっと抱き締めた。
他の三人がポカーンとしている間に、ルナはこっそり術を使った。
(命遁・伸長成長!)
忍猫の髭は、元の長さくらいまで伸びた。
そして、ずっと抱いていたいのを抑えて、忍猫をイタチに返した。
「ルナ、今何をしたんだ?」
イタチには、ルナが何かをしたことはわかったが、何をしたかまではわからなかったらしい。
「え、別に。ただ抱いてみたかっただけ~」
他の二人がいる手前、正直に言う訳にもいかず、誤魔化しておいた。
「この度はお世話になったニャ。」
「確かに早く身を固めニャとは言ったニャけどまさか猫妻に惚れるなんて。」
忍猫を連れて猫婆のところへ戻ると、忍猫の両親がいて、礼を言われた。
「こいつは腕は立つくせにメスを見る目がニャくて。」
「一族のために最高の嫁さんを探したつもりだったのニャ。」
忍猫がしょんぼりしていて、ルナは心のなかで、はぅ~、かあいいよぉ〜、を連呼していた。
猫婆にも礼を言われた。
「依頼通り任務ご苦労さん。
イタチ。次に来るときはうちはの溜まってるツケをたっぷり払って貰うからね。」
そのまま何も言われずに任務終了となった。
髭のことに猫婆が触れなかったことを、みんなが不思議がっているのが、雰囲気でわかった。
その日の帰り道。
「欲しかったもんが手に入ってよかったやん。」
「まあな。」
「もっと嬉しそうな顔せんね。一族の運命がかかっとるとやろ?」
「そこまで大げさじゃねえよ。けどこれで親父が良くなれば一族もまだまだ安泰だ。」
一族、と言う単語が出て、イタチは自分の一族のことを考え始めた。
(あの忍猫もテンマも、みんな一族のことを思っているんだよな…………)
ルナはイタチの未来を思って、そろそろ方向性を考えなければならないことに気づいた。
(私はどうするべきなの………?)
李蘭と那由他は神皇一族のことを思って、神隠れの里人の鎮魂を祈った。
(我が創造主の力不足で………)