第50章 計画、始動
「あぁっ……いい感じに腕に収まるこの抱き心地……最高です…………
それにとっても可愛いし…………多由也さん、私の専属になってくれればいいのに〜…………」
ルナが頰を赤く染め、息を荒くして、多由也をギュウッと抱き締める。
「ちょ、暑いって……離れろよぉ〜……」
自分を包むいやに高い体温にうんざりしつつも、多由也はルナを引き剥がすことができなかった。
それは、ルナの実力を恐れていたのもあったが……なんだかんだで、満更でもないからでもあった。
「えぇ〜?だって、一ヶ月もお預け食らわされたんですよ?いいじゃないですかぁ〜。甘えても。
…………ああ!また会えないのかと思うと、胸が苦しくなってきましたっ…………
お願いします、もう少しこのままでいさせて下さいっ…………」
ルナが多由也と目線を合わせて、額をくっつける。
澄んだ青色に浮かぶ妖艶な光に、多由也は何かを察した。
自分がいない間に、ルナには何か、大きな変化があったのだと。
そしてその変化は、あまり望ましいものではないということ。
深く考えないほうがいい、直感的にそう思った。
「……わかったわかった。好きにしろ。もー、なんでもいいぜ。
アンタに逆らおーってのが、そもそもムリだしな。」
多由也はそう言うと、ルナの背中に腕を回して、軽く叩いた。
それが多由也にできる、精一杯の愛情表現だったから。
「……ふふ、多由也さんありがとう!…………スキスキ。」
ルナは多由也にべったりとくっつき、しばし癒しの時間を楽しんだのだった…………
(……なんか僕、お邪魔みたいだな…………)
君麻呂は何かを察すると、その場を後にした。
自分の役割を多由也に取られてしまったが、まあいいか、というようなテンションで、盛り上がっている二人から離れ、自室に入った。