第50章 計画、始動
「……ふぅ。」
自分の部屋のベッドに寝転がって、君麻呂は小さく溜息を吐いた。
瞼を閉じれば、浮かぶのは香燐や多由也にベタベタしているルナの嬉しそうな顔。
ルナが笑っているのは君麻呂にとっても幸せなことだったが、同時に、モヤモヤしたものも感じた。
こんなに想っているのは、僕だけなのだろうか、と。
その直後、君麻呂は自分の考えに噴き出した。
(僕だけなのか、だって?…………そんなの、とっくにわかりきっていたことじゃないか。
ルナは、誰のものにもならない。あの子にとって僕は、暇潰しに過ぎない…………
……多由也や香燐がいれば、こうも容易くとって代わられる程度の存在…………
ああ、どうして…………)
こんなにも、好きになってしまったんだろう。
君麻呂は遂に、自分のルナへの気持ちを認めた。
ルナを大切に想っていること、精神的に力になりたいと思っていること、もっと触れ合いたいと願っていること。
大蛇丸への忠義を忘れたわけではない。しかし、その感情に気がつかないフリをするのは、もう限界だった。
ルナへの気持ちを認めたとき、君麻呂の中で、ドクンと何かが脈打った。
(そうだ……このままでは、ルナは大蛇丸様に身体を奪われてしまう…………
…………そんなのダメだ。でも……僕に大蛇丸様を説得することなんて……)
ルナの代わりに僕を、と言ったところで、軽くあしらわれるのは目に見えている。
確かに、君麻呂も血継限界を保有してはいるが、ルナとは存在そのものの格が違うのだ。
(ルナ…………伝説の、神隠れの里の末裔で、生贄になるはずだった存在……
彼女が生きていることが、僕を大きく変えようとしている……いや、もう変えてしまっている。
あんなに大蛇丸様だけを思っていたのに、今じゃ…………いや、そもそも生きてすらいなかっただろう。
…………ルナ、君は一体、なんなんだろうな…………)
君麻呂はもう一度溜息を吐いて、しばらく物思いに耽った。