第50章 計画、始動
次の日には、大蛇丸はまた他のアジトに出かけてしまった。
その入れ替わりのような形で帰って来た音の四人衆の一人、多由也に、ルナは絡みに行っていた。
「多由也さ〜ん!お久しぶりです!お帰りになるのを待ってましたよ!」
「あー……ルナ様……」
多由也はやたらハイテンションな上にフレンドリーなルナにどう返していいかわからず、視線を泳がせた。
二年半前の里抜けのとき、ルナの力を目撃したときのショックで、いまいちルナとの距離感が掴めずにいるのだった。
「またまた!様、なんて付けないで下さいよ、淋しいじゃないですか、距離置かれてるみたいで!
ね、呼び捨てにして下さいよ、多由也さん!」
ルナが、自分は誰にでもさんを付けるのを棚に上げて、そうせがむ。
その様子は、飼い主に撫でてもらうのを期待している小型犬のようでもあった。
その後ろからは、無表情の君麻呂が、ジッと多由也を見つめ、無言の圧力を発していた。
「うぅ…………ルナ。」
ルナの、というよりも、ルナの背後に立っている君麻呂の視線に負けて、多由也はルナを呼び捨てにした。
「ふふっ…………あはははは!ありがとうございます!」
ルナは途端に笑顔になって、遠慮なく多由也に抱きつき、すりすりと頬擦りする。
ルナと多由也は身長が殆ど変わらないからこそ、できることだった。
「多由也さんがいない間ね、私とっても寂しかったんですよぉ〜。今回は、どのくらいいられるんですか?」
「えーっと……一週間くらいだけど……」
「わーい、やったー!一週間も一緒!うーれしいなー、うーれしーいなー、ふふふっ!」
ルナは久しぶりに多由也に会ったことで精神が低年齢化し、いつもにも増して甘えん坊になっていた。
嬉しそうにしているルナを見て君麻呂は僅かに口角を上げ、またそれを見た多由也は、
(ルナ様ってやっぱ、いつもこーなんだろーな…………
……てことは、いつもは君麻呂にこんな風に甘えてるってことか?)
と、鋭い勘繰りをしていた。