第50章 計画、始動
それから、ルナと大蛇丸は術の用途について話し合ったり、
性質変化同士を組み合わせる方法について議論したりしてから数回術を練習し、二人は帰ることにした。
「…………あの、大蛇丸さん。」
「………なあに、ルナちゃん?」
不意に口を開いたルナに、大蛇丸が横を見た。
「…………大蛇丸さん……やっぱり、私の身体、欲しいですか?」
「……それは…………」
ルナの言葉に、大蛇丸は口籠る。
イエスとノー、そのどちらも、簡単に言い切ることを躊躇わせるものだったからだ。
「……ふふっ、すみません。変なことを聞いてしまいましたね。忘れて下さい。」
ルナはそう言うと、クスリと笑って、前を向いた。
そんなことを訊いて、私は大蛇丸さんに何を期待しているんだろう、という諦念を新たにして。
その仕草に何か寂しげなものを感じて、大蛇丸は思わず口を動かしていた。
「……っ、ねえ、ルナちゃん…………」
「?なんでしょう?」
ルナはさっきのことなどまるで気にしていないような顔で、明るく笑う。
大蛇丸に対して、ルナが自分の脆さ弱さを出すことは無かった。
まあ当然だ。自分の意思でルナの身体を狙っている奴に、心など開く訳がない。
「……あの……」
「?」
口を開いたまま、何かを言いかけて固まっている大蛇丸の言葉の先を、ルナは辛抱強く待った。
「……いえ。今晩はハンバーグがいいわ、って言いたかったのよ。」
「……え?あ、そうですね。献立表にもそう書いてありましたから、大丈夫です。忘れてませんよ。」
ルナは大蛇丸が本当に言おうとしていたことには微塵も気がつかず、大蛇丸さんの食いしん坊さん、と言ってクスクス笑っていた。
(ルナちゃん……貴女は一体、何を考えているんでしょうね……)
大蛇丸は言えなかった言葉を胸の中で持て余しながら、上機嫌そうなルナの横顔を見つめていた。
一度は言えるかもしれないと思ったものの、やはり無理だった。
『もう、いいわ。貴女の身体は取らないし、イタチ君もサスケ君も狙わない。
だから、ずっと一緒にいて頂戴。』
なんて屈辱的な台詞。
言えるわけがなかった。
しかし、決断のときは、すぐそこに迫っていた。