第50章 計画、始動
そう…………ルナは能力を小出しにすることで、実力を下に偽ろうとしていたが、
そんな安易な手に引っかかるほど、大蛇丸は馬鹿ではなかった。
つまりは、ルナが本気になれば大蛇丸と対等以上に渡り合えることは、とうの昔にバレていた。
それでも大蛇丸がルナを潰そうとしないのは……ルナが大蛇丸を潰そうとする気配がなかったからと……
……ルナを気に入ってしまったからだった。
言うべきことは言いつつも、自分に笑顔を向けて、惜しみなく世話を焼いてくれる存在は、大蛇丸にとって目新しく、貴重なものだ。
大蛇丸にとってルナは既に、次の器以上の何かになっていたのだ。
強くなるため転生しなければ、そう思う度に、大蛇丸の脳裏には、ルナとの奇妙で愉快な思い出ばかりが浮かんだ。
その度に、ふと考えてしまうのだった。
どうしてルナちゃんは、私のところのいるのかしら、と。
大蛇丸はルナがサスケの代わりになりたがる理由や、自分を倒さない理由、
何を思って里を抜けたのかなど、色々なことが気になってしまっていたが、一向に訊けずにいた。
それが、今の表面上は穏やかな日々を壊してしまうことをわかっていたから。
しかし、再び転生が可能になる日は、刻々と近づいている。
そのとき、大蛇丸は決めねばならない。
ルナと決別し、肉体を奪うために命懸けで戦うか。
ルナが器以上の存在になってしまったことを認め、金輪際サスケやイタチを狙わないことを誓うか。
プライドの高い大蛇丸にとってそれは、屈辱的なことですらある。
でも……そんなプライドなど投げ打ってしまいたくなるほど、大蛇丸にとってこの二年は、幸せなものだった。