第50章 計画、始動
「どうも、こんにちはカンクロウさん。ふふっ、我愛羅は返しませんよ。
彼には、一尾を渡していただかなくてはならないんですから。」
カンクロウの前に降り立ち、ニッコリと微笑むルナ。
「誰だお前!どうして俺の名を知ってる⁈」
姿は見えるのに、実体はあるのに気配はない、ルナの常人ならざる不気味さを前にして、カンクロウが叫ぶ。
目の前の敵がかなり強そうなことと、狙いが守鶴だとわかったことで焦りが加速していた。
「……ふふ……噂くらいは聞いてるんじゃないですか?
"皇レイ"として木ノ葉に潜入、その後里抜けした、うちは一族襲撃事件の犯人…………それが私、うちはルナ。
お久しぶりです、カンクロウさん。会うのは約……三年ぶりですね。」
ルナがスラスラと軽い説明をする。
「皇レイ……お前、あのときの‼︎」
カンクロウがその当時のことを思い出して叫ぶ。
同時に、こめかみを汗が流れ落ちた。
実のところ、カンクロウはルナに勝てる気が、全くしなかったからだ。
「あ!思い出していただけましたか。そうです、皇レイですよ!憶えててくれたんですね!」
ルナがカンクロウの様子も気にせず、嬉しそうにニコニコと笑う。
それに対して、カンクロウは笑うどころではなかった。
史上最年少の天才忍者と謳われた少女が、すぐ目の前にいるのだから。
殺気とは違う…………圧倒的な何かに、足が竦んでいた。
「……まあ、いいや。おしゃべりはこのくらいにしましょうか。
さあ、ここを通りたくば、私を倒してごらんなさい。
ね?我愛羅が大事なんでしょう?」
ルナが動けないカンクロウの耳元で囁き、精一杯馬鹿にした声でクスクスと笑う。
砂の里からも憎まれるための、演技だった。