第50章 計画、始動
そのとき我愛羅は、一人で里を歩いていた。
僅かに耳に入った音と突然眠り込んだ里人達から、我愛羅は上空に現れた白い人影の歌声が、その原因であることを悟る。
(歌を聴かせて眠らせる術……何者だ?)
瓢箪の栓が開き、砂が我愛羅の足下に入り、持ち上げる。
ルナはそれを見て歌うのをやめ、デイダラの周りの結界を解いた。
「デイダラさーん、ほら、風影様がいらっしゃいましたよー。頑張って下さいねー。」
「え?ナンダいきなり……まぁ、いいや。うん。」
デイダラは何か二言三言ぶつぶつ言うと、我愛羅に向かっていった。
ルナはデイダラから少し離れて飛びながら、様子を伺っていた。
多少の戦闘の末、デイダラがうまいこと我愛羅を捕獲し、ルナに声をかけた。
「おーい、ルナ!捕まえたぞ、うん!ダンナんとこに戻るぞ!」
「はーい。お疲れ様です、デイダラさん。素敵な爆発ですね。」
ルナがデイダラの側に寄り、楽しそうに微笑む。
人殺しには感心しないが、デイダラの爆発の芸術性、それはそれとしてルナは評価していたのだ。
ここもルナの少し変なところである。
「だろだろー?芸術は爆発だぜ、うん。やっぱルナはイイなー。
そう言ってくれるの、ルナだけだぜ。それに、お前ってよく見ると……」
「……なんでしょうか?」
何かを言いかけてやめたデイダラに、ルナが小首を傾げる。
「……や、やっぱなんでもねぇ。行くぞ!」
デイダラはルナの疑問に答えることはせず、プイっと前を向いた。
(……よく見ると……お前ってなかなか芸術的だー、なんて……危なかったぞ、うん。
だってルナ、昔もすっげ可愛かったけど……なんか今は……
いやいやいや、ルナに限ってそんなことねぇよなー。)
ルナの容姿に芸術性を感じてしまった……粘土造形師として、それを認める訳にはいかなかった。