第50章 計画、始動
ルナは砂隠れの上空にデイダラを導くと、粘土の鳥に体重を預け、デイダラの耳に唇を寄せた。
「……デイダラさん。あれが我愛羅です。ほら、あの赤い髪で瓢箪背負ってる人。」
「……どれだー?えーと……あ、アレか、うん。」
デイダラがルナの指差す先をスコープで見て、小さく頷いた。
「あの人の瓢箪の中には、チャクラを蓄えた砂が入っています。それを使って、防御、攻撃、なんでもするわけです。
他にも、岩を砕いて即席で砂を作り、操ったり……油断はしないほうがいいです。」
「んなこたぁわかってら!だからオイラのこの芸術シリーズをだな…………」
「はいはい。わかってますよ。芸術は爆発だ、でしょ?」
ルナはデイダラをなだめると、ふふっと笑って、デイダラから離れ、再び宙に浮いた。
「だから、デイダラさんは我愛羅との戦いに集中して欲しいんです。私はそのためにいるんですから。
さあ!今こそ、私の芸術を見せるとき!うちはルナのスペシャルリサイタルの、始まり始まり〜!」
ルナはデイダラの周りに結界・波動吸収&結界・夢幻球を張ると、胸一杯に息を吸い込んだ。
そして、歌った。
昼間の砂隠れの里に、ルナの透き通るように美しい声が響き渡る。
そして、耳にしたものから順に、スコッと眠りについた。
一尾の人中力の我愛羅に子守唄の術が効かないのは計算づくで、この行動の主目的は、
砂の里人の注目をルナに集め、敵だと思わせることにあった。
我愛羅以外が眠りについたところでデイダラにかけた結界を解除し、戦闘、捕獲させて、隙をみて指輪を嵌める。
砂と暁、どちらにも大した被害を出させることなく状況を終わらせる。
それが、目下のルナの目標だった。
(ルナ、一体何やってんだ?折角隠密行動しよーと思ったのに、うん。
なんか、歌ってるっぽいし……でも聞こえねーし……どーなってんだ、うん?)
里一つを眠らせるべく歌い続けるルナを、デイダラは結界の内側から、混乱したように見ていた。