第49章 二年後
「……うん。」
君麻呂はルナの言葉を聞いて少し驚いていたが、しっかりと頷いて、ルナの背中をさすった。
抱きしめて終わりだった、これまでにない要求だったためだ。
だが、それを声には出さなかった。
君麻呂にとってそれは、願ったり叶ったりだったのだから。
「…………今日はもう、寝てしまおうか?」
「……はい。」
君麻呂の問いに、ルナが小さく同意する。
それを確認すると、君麻呂はルナの靴を脱がせ、続いて自分も靴を脱いだ。
そして、ルナの身体をベッドに横たえ、添い寝し、同じ毛布を被る。
そうしている間にも心臓がだんだん五月蝿くなり、それをルナに悟られないか気が気でなかった。
涼しい顔をしてはいたが、その心の中は狂おしいほどの欲望が渦巻いていた。
その扱い方を知らない君麻呂は、いつもそれの扱いに苦労していた。
君麻呂がドキドキしているのに対し、ルナの心は、呆れるほど静かだった。
好きな人間の存在を肌で感じられること、それが今のルナが手にできる、最大の幸福。
ルナはそれ以上を求めることはしなかった。
「君麻呂さん……おやすみなさい。」
ルナが君麻呂の翠色をぼうっと見つめて呟く。
「うん……おやすみ。」
君麻呂がそう言ってルナの頭を撫で、身体を包み込む。
ルナはそのまま、君麻呂の腕の中で、ひとときの甘い夢の中に堕ちて行った。
身体が焼けつきそうなほど熱い君麻呂の欲望を、置き去りにして。