第49章 二年後
それを見て、君麻呂がまた、小さく溜息を吐く。
「…………大分眠そうだね。今日はもう、休もうか。部屋まで送っていくよ。
さあ、立って。」
「……はい…………」
ルナがふらりと立ち上がって、君麻呂の腕に縋り付き、ぎゅっと抱きしめる。
これもいつものことなので、君麻呂は特に文句を言うこともなく、ルナの頭を優しく撫でた。
ルナが不安定になっているとき、こうすると落ち着くのを知っているから。
君麻呂とルナの身長差は20cm以上もあるから、こうして並ぶと兄と妹のようだった。
「…………じゃあ、行こうか。」
君麻呂が呟き、二人はルナの自室に向かった。
ルナの部屋に着き、ベッドにルナを座らせると、君麻呂は部屋のドアに手をかけた。
「……それじゃ、僕も自分の部屋で休むよ。食事の時間になったら呼ぶ。」
そう言って出て行こうとする君麻呂の背中に、ルナが消え入りそうな声で呼びかける。
「…………待って、ください。君麻呂さん。お願い、します…………」
「……なに?」
命令を受けて君麻呂が振り返り、ルナの側まで寄った。
「…………今日はっ……一緒にいてくれませんか…………?」
(あともう少しで、大蛇丸さんと決別……だから…………)
ルナが上目遣い(あくまで目線の差のせい)で君麻呂に懇願し、服の裾を軽く引っ張った。
もし拒否したら、そのまま泡沫のように消えてしまいそうなほど切ない表情が、君麻呂の心を貫く。
ルナの願いを退けられる訳もなく、君麻呂はルナの横に腰掛けて、抱きしめた。
「……わかったよ。だからそんな顔をしないで。
………………僕は、どうすればいい?」
精一杯の優しい声で、君麻呂がルナに問いかける。
「…………一緒に、いてください。
…………明日まで。」
ルナは君麻呂の腕に抱かれて、一つの願いを口にした。