第49章 二年後
それぞれにシャワーを浴び、身体を拭いて新しい服を着て、ルナがシャワールームから出てくると、君麻呂は既に出ていた。
「あー、気持ちよかった……あ、君麻呂さん、早いですね。流石。」
ルナが髪の毛を少し雑に拭きながら、君麻呂の横に座る。
「…………まあね。僕の髪は君ほどじゃないから。」
そう言う君麻呂の髪は肩のすぐ下まで。
それにひきかえ、ルナの髪は腰まであった。
「そうなんですけどねー……なんだか切りたくなくて……」
ルナが自分の湿った髪の毛を指で梳き、ボソッと呟く。
確か、最後に髪を切ってくれたのは李蘭だったか。
ルナはどことなくしんみりして黙り込み、手を止めてしまった。
「…………ルナ。ちゃんと拭かなきゃ。風邪をひいてしまうよ?」
髪を拭くのをやめてしまったルナを見て、君麻呂が声をかける。
それでもルナは黙りこくったままで手を動かそうとはしなかった。
と言うよりも、できなかったのだ。
どうかしたのかと、君麻呂がルナの顔を覗き込むと、ルナの薄青の瞳には涙がなみなみと溜まっていて、今にも零れ落ちそうだった。
(ルナ…………)
君麻呂はルナのそんな様子を見て、何も言わずにただ、ルナを腕の中に収めた。
ふとしたことがきっかけで泣きそうになることが、ルナにはよくあることを知っていたから。
その度に君麻呂は、ルナが大丈夫だと言って離れるまで、側にいるのだった。