第49章 二年後
躱して、受け止めて、蹴って、殴って。
絶え間無い攻防が数時間続き、二人の身体からはいつの間にか、湯気が上がっていた。
君麻呂の額に大粒の汗が浮かび、それがつうっと頰を流れる。
その顔色はいつも通りだったが、少し息が上がっていた。
対するルナは、白い頰を薔薇のように赤く染め、唇には不敵な微笑みを浮かべていた。
身体中にかいた汗が着物に染み込み、二人の肌に貼りつく。
その気持ちの悪い感覚が嫌になってきたのと、一汗かいたのもあって、ルナは攻撃をやめ、君麻呂からスッと離れた。
「ふぅ……君麻呂さん、少し、休憩にしませんか?汗だくですし……ね?」
ルナが暑そうに、手でパタパタと顔を扇ぎ、ポニーテールにしていた髪を解く。
束縛から解放された白銀の髪がさらりと流れて、芳しい香りを放った。
その香りにぼうっとしそうになるのを堪え、屍骨脈の骨を引っ込めると、君麻呂はゆっくりと頷いた。
「…………いいよ。シャワー浴びてきなよ。服も変えて…………後は、術の練習にしよう。」
「わーい、やったー!あ、君麻呂さんも汗だくじゃないですか。さ、ご一緒に。ねぇ?」
「……うん。」
ルナに腕を絡められるがまま、君麻呂はルナと一緒にシャワールームに向かった。
断っておくが、一緒に入る訳ではない。
ルナももう十六だ……身長は153cmで止まってしまったけれど。
顔もあまり変わっていないから、ここ数年で急に大人っぽくなったナルトやサスケ、サクラから見れば、
ルナは二年前に取り残されているようにも見えるかもしれない。
実際、そうなのだが。
ルナは大蛇丸のアジトの中でも独自に術の開発・習得などを進め、確実に強くなっていた。
神通眼の瞳術もいくつか増えたし、神通眼の紋様を利用した幻術も生み出した。
治癒力も飛躍的に向上し、大抵の損傷を一瞬で補うことさえできる。
でも…………それでも、どんなに強くなっても、ルナは変わらない。
心はいつも、罪悪感や、愛する者達に会えない悲しみで埋め尽くされ、ぐちゃぐちゃに乱れていた。
しかし……その感情に蓋をすることは、少し上手になっていた。
でなければ、ルナは既に潰れてしまっていただろう。