• テキストサイズ

神隠れの少女【NARUTO】

第48章 奈落へ


「……シスイさん。あなたのせいではありません。どうか自分を責めないで下さい。

それに、シスイさんのそんな顔を見たら、ルナ様が悲しみますよ?」

シスイの辛そうな様子を見かねた李蘭が、そう声をかける。

「ルナ様にとってシスイさんが、どれだけ大切な存在か…………

ルナ様の御心は、シスイさんの存在によっても支えられていたのですよ?

だから……シスイさん。笑って、下さい。あなたが笑っていることが、ルナ様の幸せなのですから。」

李蘭の視線が、言葉が、シスイの心を真っ直ぐに貫く。

その言葉は優しくもあり、勝手でもあった。

あなたは一人の人間としてできることは全てやった、だから気に病むことはない、と慰め。

一方では、ルナのために、罪悪感などという不要なものは捨ててしまえ、というのだから。

ルナに支え、ルナのために生き、ルナに全てを捧げる李蘭だからこそ言える言葉だった。

でも……それでも、今のシスイにとってその言葉は、これ以上ないほど有り難いものだった。

シスイの存在を認め、肯定し、『ルナのため』という免罪符をもって、幸せになることを許す。

罪悪感に苦しむシスイにとって、それが唯一の救いの道であることを見抜いた上で。

李蘭は、はっきりと言い放った。

「うん……そうだな。俺が思いつめたって、イタチやルナが幸せになる訳じゃないものな。

悩んでる暇があったら、二人のために、努力しなくては……李蘭、ありがとう。」

(そうだ……ただ苦しんでるんじゃ、なんの解決にも、贖罪にもならない。

俺は、ルナに……幸せになって欲しいんだ。その方法を模索することに、全力を注がなくては。)

シスイはハッとして、李蘭に礼を言った。

やるべきことをはっきりと見据えたとき。

声はもう、聞こえなくなっていた。
/ 826ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp