第48章 奈落へ
「私はこれから、ルナ様のご意思に反することをします。みなさんなら、その意味がお解りになるでしょう。
あの方の本気を受け止められるモノなど……この世界には存在しない。
…………ルナ様に限ってそんなことはないと思いますが……最悪、攻撃される可能性も無くはありません。
私は、ルナ様の僕です。そのことに誇りを持っています。ルナ様に攻撃されて死ぬのであれば、それも運命というもの。
ですが…………あなた方は違う。
あなた方には、あなた方の世界が、未来がある。
この里にいるのは構いませんが、今後もルナ様について私達と共に調べるのならば……それなりの危険が伴います。
ですから、今ここで、答えて下さい。
あなた方は、今後ルナ様に関わる意思はありますか?」
李蘭の視線が、シスイを、再不斬を、白を射抜く。
その瞳は問うていた。
『貴方達人間に、ルナ様のご意思に背く覚悟はあるか?』
いつもより濃い李蘭の緑色は今、ルナと同じ複雑な紋様を宿して、万華鏡のように煌めいていた。
深緑の神通眼——神の分身たる、李蘭のチカラ。
普段は優しい光を放っている李蘭の瞳は今、強い決意と覚悟をもって、人間達を威圧していた。
——————この私に怯むようでは、ルナ様に背くことなど到底できない。悪いことは言わない、関わるのはやめておきなさい。
李蘭は口を開かずして、そう語っていた。
この言葉は、神の分身であるという慢心から来るものではない。
主人に支え、守ることしか生き方を知らない李蘭から、自由を選択することができる人間達への僻みでもない。
それはただ……ルナの保護者としての、隣人への気遣い。
つまりは、優しさだった。