第48章 奈落へ
「……李蘭、今、未来を見通すって言ったか?」
一番初めに我に返ったシスイが、李蘭に確認する。
「……はい、確かに。私には未来を見通す能力があります。
元々は紅桔梗様のものでしたが、紅桔梗様が装置にお入りになる直前、私に授けなさったのです。
ですが……今言いましたが、私は今、この能力の使用を禁じられています。
先日も言いましたよね?私達はルナ様のご命令には決して逆らえないと。
ルナ様の命令を上書きできるのは、紅桔梗様ただ一人です。
しかし、そう都合良く出て来てくださるとも思えませんね…………
第一、憑依できる身体がなければ、紅桔梗様は私達と意思疎通を図ることすらできないようですから……
ルナ様が紅桔梗様のことに気づいているとは思えませんが、結局のところ…………
………………私達の、完敗です。」
李蘭は重々しい口調で言った。
俯き黙り込む李蘭の肩に、真剣な顔をした那由他が手を置く。
「…………李蘭。諦めるのはまだ早いぜ。俺の能力は封じられてねぇんだから。
ルナがこれからどうするつもりなのか、未来を見ることはできなくても、ルナの過去から予測することはできるだろ?
…………だったら、やるしかないだろ。」
那由他が握り拳を作って、李蘭に畳み掛ける。
その瞳の中には、青い炎がゆらゆらと燃えていた。
「那由他…………そうですね。落ち込んでいるヒマはありませんね。私達は、私達にできることをしなくては。
あなたのお陰で、目が覚めました。」
李蘭は普段は頼りない那由他に励まされて我に返り、自分の頰をバシンと叩いて立ち上がった。