第48章 奈落へ
「…………クソッ!」
ヒルゼンに弟子入りするための話をつけて、一人家路についた後、サスケは壁をダンと叩いた。
「…………兄さん……姉さん……なんでだよ……なんでアンタらはいつも、俺を置いてどこかに行っちまうんだよ……」
サスケの瞳は先程とは違い、憎しみではなく、悲しみに縛られていた。
ルナが自分の本当の敵だと、頭ではわかっていても、やはり、まだ完全に受け入れられた訳ではないのだ。
昔のルナの優しさや愛情が、虚飾にまみれたものだと理解していても。
ルナが皇レイに変化していたときにサスケ達を大切にしていたのは、あくまで木ノ葉を欺くための演技に過ぎないと思っていても。
それでもサスケは…………ルナを、信じたかった。
しかし哀れなサスケは、復讐心以外の生きる原動力を知らない。
だから……ルナは一族殺しの重罪人で、世界征服を目論む危険人物だと思い込んで憎悪するしか、自分を保つ方法を知らなかった。
そうしなければ、一族を亡くし、兄を失い、ルナとの思い出すら破壊されたサスケは…………生きていけなかった。
だから、ルナの善意を信じているナルトやサクラ、どっちつかずな態度を取っているカカシに苛立ち、ムキになってしまうのだ。
端的に言えば、ルナのサスケのためを思った行動は、サスケを更に深い闇に落としただけだった。