第48章 奈落へ
「あ、そうだ、香燐さん!少し、失礼しますね!」
ルナはそう言うと、香燐の右腕を持ち上げて、命遁を使用しながら肩から指先までを、服の上からスーッと撫でた。
左腕も、同じようにスーッと撫でる。
勿論、香燐の腕の傷跡を消すためだ。
「うえっ?今度は何なんだよ……」
香燐はそうぼやきながらも、されるがままになっていた。
「……はい、おしまいです。もしまたできちゃったときは、私に言って下さいね!いつでも治しますから!
それじゃ私、少し着替えて来ますね!」
ルナはそう言うと、さっき案内された自分の部屋に引っ込んだ。
「……一体なんだんだアイツは……いきなり抱きついて来たり……イミわかんねー……」
ルナがいなくなった後、香燐はハァと溜息を吐いた。
「……いや、ルナのことだから、意味が無いってことはないと思うよ……
……僕も、病気を治してもらっちゃったしね…………」
ストックしてあったパーカーを着ている君麻呂が呟く。
「……ふぅ〜ん……てことは、あれ、もしかして……」
もしや、と思い、香燐が自分の服の袖をまくって、腕を見た。
そこにあるはずだった無数の噛み跡は綺麗さっぱり無くなっていた。
「おお〜、コレはスゴイ!傷跡まで消せるのか……流石、大蛇丸様の次の器……」
「……そう。大蛇丸様の次の器さ…………」
そう言う君麻呂は無表情だったが、数年後にはルナがルナでなくなっていると思うと、少しモヤモヤした。
そのとき、ルナの部屋の扉が開き、ルナが出て来た。
「……君麻呂さん……あの、パーカー、ありがとうございました……洗って返しますね。」
「……いや、別にいいよ、今返してくれれば。それよりも……
……君、すごい格好してるね……趣味?」
「あ……すみません、これが一番地味だったので……変、ですか?」
そう言うルナが着ているのは、白い着物と、青い短袴、白のハイソックスに、青い鼻緒の下駄だった。
李蘭がルナのために揃えたそれは、とてもよく似合っていて、サイズもぴったりだった。
ただ、この大蛇丸のアジトでは、少々浮いていた。