第47章 二度目の里抜け
「ふふふっ……ガハッ!」
ルナが吐き出した血が、カカシの上半身をべったりと濡らす。
「ルナ……お前……何やってるんだ⁈」
カカシは我に返って、ルナの胸から腕を抜こうともがいた。
その腕を、ルナの血まみれの細い指が、グッと掴む。
「カカシさ……ダメじゃ、ないですかぁ…………敵の前で、集中を、切らしちゃ…………クスクス…………」
「ルナ……ルナ……なぜ、どうして⁈」
まさか命中するとは思っていなかったカカシは、ひどく狼狽していた。
それもそのはず、密かに、ずっと想い続けていた人の胸に、自分が大穴を開けているのだから。
腕に感じる温かく湿った感覚と、周りに充満する鉄の匂いと、
顔にかかるルナの熱い吐息が、これが紛れもない現実であることを示していた。
だが、カカシはこの状況に、例ののはらリンのことを結びつけたりはしなかった。
なぜなら、視線のすぐ先にいるルナが浮かべているのは、絶望の表情ではなく、ただ、絶対的勝者の甘美な微笑だったからだ。
「さぁ、ね……クスクス……なんででしょ、ゴボッ、ガッハ!」
心臓や肺がズタズタになっているため、ルナは喋るのが苦しくなって、更に大量の血を吐いた。
しかし、ルナは、どんなに苦しくても表情だけは、決して崩さなかった。
カカシに真意を悟られること、それはルナの計画に決して良い影響を与えないからだ。
それに……ついさっき、同じようなことをやったせいだろうか。
さっきに比べて、痛みは大したことがないような気がした。
ルナの吐いた血の一部は飛び散って、カカシの頰を赤く染めていた。
「早く放せ!……ルナ、お前ならこれくらい、治せるん……だよな?
ルナっ…………死ぬなっ!ルナっ‼︎」
依然としてカカシの腕を放さず、傷を治そうともしないルナに、カカシは焦って叫んだ。