第47章 二度目の里抜け
その数分後。
「ナルト、サクラ、サスケ、レイ‼︎」
終末の谷に、シカマル率いる小隊を追って来たカカシが姿を現した。
そして、目の前に広がる異常事態に言葉を失う。
小隊のメンバー八人は、目立った外傷はないものの、全員が意識を失って倒れている。
しかもその中心、うつ伏せで倒れているサスケの側には、ズタズタに裂けたブカブカの黒い服を纏った、銀色に輝く長髪を持つ少女が、
地面に両膝と両手をついて雨に打たれ、呻きとも啜り泣きともつかない声を漏らしていたのだから。
カカシはまず、倒れているメンバーに息があることを確認し、それからルナに目を向けた。
「…………お前…………誰だ?小隊のメンバーか?」
カカシは七年ぶりに見たルナが、かつて共に任務をこなしたルナだとは思わず、
そう言って静かに、ルナの肩に手を置いた。
事情がはっきりしていなくても、泣いているルナを心配こそすれ、攻撃などできる訳がなかった。
なぜなら、今のルナには、敵意も悪意も殺気も、さっきまでの傲慢とも取れる態度もなく、ただ悲しみだけで覆われていたからだ。
状況が状況でなければ、忍にすら見えず、ただのか弱い少女に見えるのではないかと思えるほどに、
今のルナの存在は、儚く、脆かった。
「…………う……カカシ、さ……」
しばらく放心していて、訳がわからなくなっていたルナは、無意識にカカシの名を口にした。
「‼︎俺を知ってるってことは、やはり、小隊のメンバーか…………立てるか?」
「う……はい。」
カカシに手を貸してもらって、ルナはゆらりと立ち上がった。
「って、君、酷い格好してるぞ!……これを着なさい。」
ルナのズタボロのシャツを見て、カカシは慌ててベストを脱ぎ、ルナに羽織らせた。
「……はい……」
ルナは朦朧とした意識のまま、ベストの中にか細い肩を収め、その端をギュッと握りしめた。
ルナは今、精神に負荷がかかり過ぎた反動で、一種の記憶喪失状態になっており、
自分がどこの誰なのか、それすら思い出せなくなっていた。