第47章 二度目の里抜け
「…………ふぅ。無事に戻れて良かった。さてと……」
ルナはそう言うと、突然大木の枝の上に飛び移った。
「綱手様に言っておいて下さい。短い間でしたが、お世話になりました、と。」
「いいや、それはできん。俺達の任務は、お前を連れ帰ることだ。一緒に来てもらう!」
「嫌でーす。では、おやすみなさい!」
「待て、何を…………」
説得を試みる忍の言葉を待たず、ルナは薄く形の整った唇を開いた。
「……葬られていく……虚無だけがこの身を包み込む……」
ルナの美しい高音が、朝の森に木霊する。
言わずと知れた、魔声・子守唄の術である。
ルナの前にいた小隊のメンバーは、ルナが『葬られていく』と言い終わるか終わらないかのうちに全員が寝てしまったため、
ルナは歌うのをやめて溜息を吐いた。
「もー、開始二秒で寝るってどういうことですか!もうちょっと歌わせて下さいよ!」
ルナは自分が子守唄の術を使用したのを棚に上げてボヤくと、影分身を数体出した。
「皇レイ奪還任務を請け負った小隊、寝かしつけられてコロッと入眠、任務大失敗の上奪還対象に返品されるの巻って感じでヨロ。」
「はーい、了解。そっちも頑張ってね!」
「……うん。」
ルナとルナの影分身は頷き合うと、ルナは四人衆のところへ向かい、
影分身は小隊のメンバーを一箇所に集め、飛雷陣の術で移動させるための作業を始めた。
「はい、ただいま戻りました。」
ルナが四人衆の元に戻ると、四人衆は耳を塞いでいた手を頭から離した。
「レイ様アンタ、一体何をしてきたんだ?」
多由也がルナに詰め寄る。
「ん?追っ手の方を、ちょっと寝かしつけてきただけです。ご心配なく。」
「ハァ……レイ様、噂より甘いお方ぜよ……」
鬼童丸が呟く。
「さぁてね、どうだか。さあ、行きましょう。まあ、ゆっくりめに、ですけど。
…………あ、折角だから、みなさんには、言っておきますね。」
「?……そりゃ、なんのことだ?」
次郎坊が訊く。
他の三人も、ルナが何を言いたいのかわかりかねて、眉をへの字にしていた。