第46章 暇乞い
「いや、俺達はそれで平気だ。後で適当に、野菜でも切るさ。
……な、ナルト?」
「おう、モチロンだってばよ!」
ナルトは今日に限っては文句を言わず、そう言って大きく頷いた。
「…………そっか。じゃあ、お願い。」
(ありがとう、二人とも…………ごめんね、最後に美味しいもの食べさせてあげたかったんだけど……)
ルナは二人の気持ちを有り難く受け取って、弱々しくも優しく微笑んだ。
「ああ、任せとけ。ナルト、お前も手伝え。」
「りょーかいだってばよ!レイ、ちょっと待ってろよ!」
サスケとナルトはそう言うと、二人でキッチンに向かった。
「ナルト、お前まず、手を洗え。米の研ぎ方は知ってるか?」
「うーん……ビミョー。」
「……しゃーない、教えてやるよ。」
「ハイハイ、どーも。」
(ふふっ、二人とも、仲良くやってるな…………)
ルナは台所で奮闘している二人をチラリと見てから、口をすすぐために洗面所に向かった。
水で口の中に残っていた胃液を洗い流し、ついでに冷水で顔を洗って、ルナはふと、鏡に映る、"皇レイ"の顔を見た。
そのひどい顔色にクスリと笑った後、ルナは眉尻を下げた。
(この姿とも、もうすぐお別れか…………寂しいな。
思えば、楽しかったな、この一年間……辛いことも沢山あったけど、それでも……
…………サスケ達と同じ班で同じ時間を共有できたのは、すごく幸せだった。
死者の一部は助けられたし……まあ、私が増やしたときもあったような気もしなくもないけど。
でも、再不斬さんと白さん、それに三代目を助けられたのは大きかった。本当に良かった。
サスケ達だけじゃなく、同期の人とも、知り合いにはなれたし。
私はこの一年間、世界で一番幸せだったと思う。)
この一年間であった様々な出来事を思い出して、ルナはしばし、幸せなときの余韻に浸った。
(……でも、明日からは…………ううん、今夜からは、厳しい毎日が始まる。
神隠れにも行けない、イタチ兄さんにもサスケにも会えない……でも、耐えなくちゃ。それが、私の務めだから。)
ルナは頭を振って悲しみを振り払うと、タオルで顔を擦り、ベッドに戻って、食事ができるまでの浅い眠りについた。