第46章 暇乞い
「……なんか、あのウェイトレスさん、変わった話し方するのね……」
サクラは博多弁的な喋り方を聞くのは初めてなのか、少し驚いたような顔をして、シンコの背中を見送った。
「あはは、そうだね。面白いよね。」
(シンコさん、元気みたいで良かった。でも、また、お別れですね……)
木ノ葉に来て以来、皇レイという少年として、シンコをさりげなく見守ってきたルナは、サクラに緩く笑いかけた。
「……レイ君、あの人と知り合いなの?」
(……って、私何訊いちゃってるの〜⁉︎)
ルナの言葉にそれ以上のものを感じたサクラは、思わずそう口走っていた。
「……え?いや。知り合いとかじゃないよ。ただ、よく来るから顔馴染みになってるってだけだよ。」
(あれあれ?サクラ、なんか勘違いしてる?まあいっか。)
「……ふ〜ん……」
(別に、好きな訳じゃないみたいね……)
本当にやましいところが無さそうなルナに、サクラは喉まで出かかっていた質問を飲み込んだ。
そうこうしているうちに、シンコが三色団子とあんみつを運んできた。
「お待たしぇしとった。三色団子とあんみつたい!」
「……ありがとうございます。」
ルナはいつもの可愛い笑顔で、シンコに軽く頭を下げた。
「んじゃ、ごゆっくり。」
シンコは白い歯を見せてルナにニッと笑いかけると、カウンターの奥に引っ込んだ。
そのやりとりを見て、サクラの頭の中に浮かんだ言葉は、
『罪つくりな鈍感イケメン』
だった。
勿論、心の中でそう呟いた後、サクラが一人噴き出したことは言うまでもない。