• テキストサイズ

神隠れの少女【NARUTO】

第46章 暇乞い


ヒルゼンが頷いたのを確認すると、ルナはニコリと笑って、ヒルゼンの耳元に唇を寄せた。

「…………皇レイという人間は、初めから存在しなかった。俺のことは、今日限りで忘れて下さい。

もし俺のことで何か問い詰められることがあれば、知らぬ存ぜぬ、あやつに操られていたのだと言ってもらって構いません。

まあ、そうならないように努力するつもりですが。」

「ルナ、そんな……」

ヒルゼンが、そんなことはできない、とでも言いたそうにルナを見る。

「三代目様ぁ〜?今はまだ、皇レイ、ですよ?」

うっかり本名を口走ったヒルゼンに、ルナがイタズラっぽい笑顔を向ける。

「おお、すまぬ……しかしだな、レイ…………」

「俺のことはご心配なさらず。三代目様こそ、お身体に気をつけて、無理はなさらないで下さいね!

次は、おじい様って呼んじゃいますよ!じゃあ俺、もう行きますね。さよなら!」

ルナはヒルゼンの両手を握って適当に上下に振ると、何か言いたげなヒルゼンを強引に振り切って、足早にその場を去った。



「ルナ…………」

ルナがいなくなった後、ヒルゼンはその場に立ち尽くして、しばらく放心していた。

(儂は最後まで……ルナに何もしてやれないのか…………)

そして、木ノ葉崩し以降ずっと鈍く痛んでいた腕が、軽々と動かせるようになっていることに気づく。

(なっ…………腕が……治っている……!)

そして、さっきはただの別れの挨拶か何かに思えた、ルナの突然の握手が、このためだったことに気がついた。


——————お身体に気をつけて、無理はなさらないで下さいね!


ヒルゼンの頭の中にルナの声が木霊して、最初から完璧な治療はせず、今になって完全に腕を治療した理由が、

ヒルゼンに引退を促すためであったことも、それがヒルゼンのためを思ったことであったことも、理解した。


(ルナ……お前は、本当に…………)

「………………優しい子じゃ。」

ヒルゼンは小さく呟くと、家の中に入り、玄関先に座り込むと、唇を噛み締めて静かに涙を流した。
/ 826ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp