第46章 暇乞い
「……はぁ。」
木ノ葉に戻って来たルナは、床に荷物を置いて止めていた息を吐き出すと、皇レイの姿に変化し、靴を履いて家のドアを開けた。
早朝の木ノ葉はまだ人気がなくて静かで、散歩をするにはおあつらえ向きだった。
玄関の外に出て家の鍵を閉めると、ルナはあてもなくふらりと歩きだした。
(今夜で、木ノ葉ともお別れか……ま、神皇ルナの野望、その第一歩だ。
大蛇丸を始末すると、色々先が読みにくくなって面倒だから、こういう風にすることにしたけど……)
ルナの脳裏に、別れ際に見たシスイの表情が蘇る。
まるで捨てられた犬のように、絶望に満ちたその表情に、ルナの中のシスイへの親愛の情が疼く。
しかしそれでも、ルナは自分の決定を覆す訳にはいかなかった。
(シスイさん……李蘭達も……ごめん。でも、これが、私の命の一番正しい使い方だと思うんだ。
だから……ごめん。)
ルナは立ち止まって自分の中に湧いた感情を押し殺し、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……お、こんな朝早くから散歩か……おはよう、レイ。」
「……カカシ先生。」
ルナが振り向くと、いつも通り顔をマスクで半分隠したカカシが、ゆっくりと手を振っていた。
「……どうした、レイ?そんな顔をして。」
カカシはルナの苦い表情を見逃さず、すかさず突っ込んだ。
「……俺、そんなひどい顔してましたか?」
ルナは慌てて作り笑いをし、さっきまでの表情を誤魔化した。
「ああ。すんげぇひどい顔してたぞ……何かあったのか?」
「別に。」
(カカシ先生……もう、私に踏み込んで来ないで下さい。)
カカシの控えめな質問を、ルナは固く冷たい声色で、バッサリと切り捨てた。
顔が笑ったままなのが、ほのかな不気味さを醸し出していた。
「そ、そう……」
(即答……なんか、すごい拒絶された気分……やはり、何かあったか……?)
そのあまりの即答ぶりに、カカシは逆に想像を膨らませてしまったが、それを口には出さなかった。