第46章 暇乞い
だから……最後の悪戯のつもりで、シスイの側にしゃがみ込み、かつてのように、シスイの頰に唇をつけた。
「……さようなら…………シスイさん。」
ルナがそう呟いて立ち上がろうとしたとき、シスイの手が素早く動き、ルナの華奢な手首をグッと掴んだ。
「……さようならって、どういうことだ…………ルナ。」
シスイが目を見開いて、咎めるようにルナを射抜く。
寝ていたはずのシスイが、丁度目を覚ましてしまったようだった。
「……シスイさん……言葉通りの意味ですよ。では。」
ルナがそう言ってシスイの手を振り解き、薄く笑う。
シスイはそれを見て、直感的に理解した。
(ここで手を離したら……もう一生会えないかもしれない!)
「待て、ルナ!……大蛇丸か?」
シスイがルナを引き止め、あてずっぽうにそう叫んだ。
それを聞いてルナは、自嘲気味にケタケタと笑い出した。
「あはははははははは……シスイさんには敵いませんね…………
私、やっぱりダメだなぁ。嘘吐くのが下手ですね。ふふふっ……」
(あぁー……私ってほんっとにダメだなぁ……)
一頻り笑うと、ルナは緩い笑顔を収め、急に無表情になった。
その細められた目は、鋭利な刃物を連想させるような細長い紡錘形を描き、青い瞳は絶対零度の冷たさを宿していた。
「…………バレちゃいましたか。まあ、それならそれで、別に構いませんよ。どうせいつかはバレることです。」
計画が失敗したルナは開き直って、溜息まじりにそう言った。
「……何故だ?何故お前が、大蛇丸のところに行かねばならない?」
シスイが怒ったように、でも悲しそうに、ルナに問いかける。