第46章 暇乞い
「っ……」
手紙のすぐ横に、パタパタと二、三滴の涙が零れ落ちる。
(嫌だよ……みんなとお別れなんて……私だって本当は嫌なんだっ‼︎
でも、大蛇丸に神隠れのことを知らせるわけにはいかないし、みんなに私が大蛇丸とした約束のことを知らせるわけにもいかない。
だって、バレたら必ず、李蘭と那由他は大蛇丸をバラしに来る。それじゃ困るし、何より……心配かけたくない。
まあ、こんなもん書いといて心配するななんて矛盾してるけど……
でも、帰って来ないのが私の意思だって確定してるかしてないかじゃ、やっぱり違うだろうし。
だから…………私は私の意思で帰って来ないんだって、ちゃんと書かなくちゃ。
……耐えろ、私。耐えて、理想の未来を実現するんだ。これは私にしかできないことなんだから。)
手の震えをこらえて、もう一度鉛筆を取り、皆へのお願いと感謝、自らの思いを綴る。
その後も、涙をボロボロと零しながら、ルナは神隠れの住人全員への手紙を書き続けた。
長い時間が経って、ルナが五枚の手紙を書き終わったときには、もう外が明るくなり始めていた。
(もうこんな時間か……そろそろ、木ノ葉に帰ろうかな。木ノ葉でも少し、やりたいことあるし。)
そして、手紙を机の上に置くと、静かに着替えや洗顔をして、朝の支度をし、
シスイのところに置いていた"うちはルナ"の服の一部や、影分身に持って来させた色々なものを回収し、鞄に詰めた。
寝室では、シスイが小さな寝息を立てて、深く眠っていた。
しばらくして、出発の支度を済ませたルナは、寝ているシスイの顔を覗き込んだ。
(シスイさん……)
少しなら平気かも、と思い、その癖っ毛を優しく撫でてみる。
見た目よりサラサラしていて、猫の毛のように柔らかかった。
ピクリ、とシスイの眉が動く。どうやら、少しやり過ぎたようだ。
シスイが起きてしまう前に木ノ葉に行こうと思ったルナは、
シスイから音もなくサッと離れ、影分身の術を解き、唾液をごくりと飲み込む。
いよいよ、このときが来た。
ルナは、行かなければならない、でも行きたくないの狭間でふらつき、なかなか踏み出せずにいたが、
自分がやらねばならないことがなんなのかは、よくわかっていた。
少なくとも、頭では。