第46章 暇乞い
食堂から出たルナとシスイは、いつも通り仲良く、日が暮れて真っ暗な道を歩いて、シスイの家に向かっていた。
「……シスイさんっ!」
並んで歩いていたシスイの腕に、不意にルナが絡みついた。
「……どうした、ルナ?」
シスイはルナが口を噤んでしまわぬよう、焦りを声に出さないようにして、静かに訊いた。
「……いえ。なんでも。ちょっと甘えたかっただけです。すみません……でも、腕は組んだままで良いですか?」
ルナはそう言って、シスイの腕をギュッと抱き寄せた。
「ハハッ、いいよ。久しぶりだものな。」
(……よかった。紅桔梗の件があったから、ルナに変な感情を持ってしまったこともあったけど、平気そうだ。
だって本物のルナは、こんなに無邪気で甘えん坊で、まだ子供なんだからな。大丈夫大丈夫。)
シスイはこの間妾に会ったときのように心臓がバクバクしないのに安心して、ルナの申し出を許した。
やがてシスイの家に到着し、二人はいつものように入浴を済ませ、布団を並べて横になった。
「……じゃあ、シスイさん……お休みなさい。」
「ああ、お休み、ルナ。」
ルナはごくいつも通り、シスイの腕を抱きしめて眠りに落ちた。
もうルナの接近には慣れていたシスイも、今夜は割と早く眠りに落ち、寝室には二人の静かな寝息が、時折聞こえるだけになった。
夜の闇が二人を優しく包み込み、ルナにもつかの間の安息が訪れた。
「ん……」
夜十二時を回ったころ、ルナが小さく呻いて、目を開いた。
ルナの浅い眠りは、ものの数時間で覚めてしまったのだ。
多分、昨日寝すぎたせいだろう。
ルナは音を立てないようにもそもそと起き上がると、机に向かった。