第46章 暇乞い
「……カブトさん、お願いします。これが最後ですから。」
ルナがカブトの瞳を真っ直ぐ見つめて頼み込む。
その視線に負けたのか、はたまた初めからこうなることを予想していたのか、カブトが苦笑して口を開いた。
「……明日の夜。音の四人衆を行かせる……それ以上は待てないよ?」
「……十分です。ありがとうございます。」
ルナは確かに頷いて、礼を言った。
「……そう。じゃあ、またね。」
カブトはそう言い残すと、胡散臭い笑みを浮かべて、ルナの家を出て行った。
「はあああぁー…………」
(もうそんな時期か…………)
カブトがいなくなった後、ルナは大きく溜息を吐いた。
「……まあ、いいや。神隠れ行こう。」
ルナはそう呟いて、皇レイの変化を解くと、飛雷神の術を使い、神隠れに飛んだ。
神隠れに着くと、ルナはいつものように叫ぶことはせず、トボトボと歩いて、いつも食堂として使っている建物を目指した。
(……これが最後の里帰り……シスイさんや李蘭、那由他、再不斬さんや白さんに会えるのも、これが多分最後…………)
「うっ…………」
ルナの唇から小さな嗚咽が漏れ、頰を涙が伝う。
それに気がついて初めて、ルナは、自分がいかに神隠れの住人を愛していたか、
神隠れの住人に会えないことがどんなに辛いことかを思い知った。
(…………ああ、たった今、初めて気がついた。私……大蛇丸のところに、行きたくないんだな……)
神隠れに引き篭もって、優しさと愛だけでできた世界に、永遠に浸っていたい。
その願いを押し殺していたことに、ルナは今更気がついた。
しかし、それが叶わないことは、よく理解していた。
(……ダメダメ。私に幸せになる資格なんてないんだから。
私はサスケとイタチ兄さんを守って、世界から戦争をなくすことだけ考えてればいいんだもんね。
さて、みんなに心配かけないように、今日もごくいつも通りで行こう!)
ルナは涙を拭って頰をパシパシと叩くと、さっきよりもしっかりとした足取りで、食堂に向かった。