第45章 宴の後
しばらくして小雪がルナを離し、ルナも小雪から、一歩離れた。
「じゃあ……………小雪。今度こそ、お別れです。」
そしてもう一度近づいて、少し背伸びして、小雪の頰に軽く接吻した。
「さようなら!どうか、お元気で!」
(わーい、やっちゃった、やっちゃった!)
ルナはそう言うと、呆けている小雪を放置して、爽やかな笑顔を残し、船に乗り込んでいった。
「…………はっ!」
船に乗り込むルナの背中を見送った後、小雪は我に返った。
(レイが………………私の頰に………………)
小雪の顔が、みるみるうちに赤くなる。
(レイってば…………ほんっとに、可愛いんだから……………)
そして、船着場の端まで走り、出港した船に向かって手を振った。
「レイー!さようならー!私、待ってるわー!」
小雪がありったけの大声で叫んだ。
「小雪…………ありがとーう!」
ルナもデッキから身体を乗り出し、小雪に手を振った。
「きっと………きっとよー!」
「ええ!さようならー!」
そのまま、ルナと小雪は、互いの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。
「……………行っちゃった。」
小雪は船が見えなくなった後、ポツリと呟いた。
その頰に、大粒の涙が伝う。
「レイっ…………」
(ダメよ…………レイがいなくてさびしいからって泣いてちゃ。私は、この国の君主なんだから。しっかりしなくちゃ。)
小雪は頰の涙を拭って、目を擦り、顔を上げた。
(レイ、私、この国をきっと春の国に変えて、あなたを待ってるから…………
……………だから、元気でね!)
どこまでも続く青い空を振り仰いで、小雪はふふっと笑った。