第44章 絆の春
「…………ねえレイ、訊いてもいい?
………………嫌じゃ、なかったの?」
小雪はそれが訊いてもいいことなのかわからず、でも黙っていることもできなくて、ルナにそう言った。
「……………そうですね…………ちょっと気持ち悪かったですね。
うえっ、思い出したら急に気持ち悪くなってきた…………」
ルナはぶつ切りにした魚肉のようなドトウの舌の感触を思い出し、自分でもよくあんなことしたなー、と思った。
「ああっ、ごめんなさい。やっぱり嫌だったわよね…………」
小雪はルナに謝りながらも、何故か少し嬉しそうな顔をしていた。
「……………でもレイ、さっきあなたの仲間が言っていたけれど、あなたはもっと、自分を大切にするべきよ。
そういうのは……………本当に好きな人のために、とっておくものよ。」
小雪は自分の気持ちを全く省みないルナがなんだか可哀想になって、そう説教をしていた。
「あははは、すみません…………以後、気をつけます……………」
(とか言って、またそういう作戦が必要になったら、さらっとやっちゃうんだろーなぁ、私………
……………イタチ兄さんとサスケのためなら、なんでも捨てられるし。でもま、正直に言わなくてもいいよね。)
小雪を自分の闇に引きずり込む気はさらさら無いルナは、軽く笑って小雪の小言を受け流した。
「……………もう、またそんな顔で笑って。
でも……………本当に、ありがとう!」
(レイ…………ありがとう。
あなたのお陰で、私、変われた。
自分の運命から逃げずに、希望を信じることができた。
一生忘れないわ!)
小雪は曇らせていた表情を、パッと明るいものにすると、ルナの頰に軽くキスした。
「えへへ、ありがとうございます。」
(わーい、小雪さんにチューしてもらっちゃった〜!)
ルナはほんの少しだけ顔を赤らめて、嬉しそうに笑った。
「ふふ、どういたしまして。」
(もう、レイってば、可愛いんだから……………)
目の前の愛くるしい少年を見て、小雪もニッコリと笑った。