第44章 絆の春
ルナは春に感動し、涙を流している小雪を尻目に、飛行船の中に戻り、ドトウの側にしゃがみこんだ。
「さあ、ドトウさんも、一緒に春を見ましょうよ〜!」
(小雪さんが許したんだし……………私も、ドトウを毛嫌いするのはやめようっと。
小雪さんて思ってたより心広いな〜)
ルナは転がっているドトウには無邪気な笑顔を向けた。
「……………春……………だと?」
「ええ!春です!さあ!」
ルナはそう言うと、ドトウの巨体を担ぎ上げ、飛行船の外に運んだ。
「………………暖かい…………っ!これは…………」
地面に伏せっているドトウの目の前にも、美しい春の風景は平等に広がっていた。
「そう、春です!風花の秘宝とは、この春のことだったんですよ!」
ルナはドトウの横に座って、朗らかに笑った。
「そうか………………早雪の考えそうなことだな………………」
そう呟くドトウの頰にも、一筋の涙が伝っていた。
やがて、三太夫の同士達がぞろぞろとやって来て、ぐるぐる巻きにされたままのドトウを担架に乗せた。
「では、ドトウさん!お元気で!小雪さんに何かしようとしたら、俺が地の果てまで追いかけて、首を飛ばしてあげますからね!」
ルナはドトウとの別れ際に、ニコッと笑ってドトウを脅迫した。
「皇レイ……………もう、そんなことは考えぬよ………
…………この春を見てしまってはな……………儂が、間違っていたのだ。
さらばだ。お前………………なかなか良かったぞ。」
ドトウは首だけを動かしてフッと笑うと、連行されていった。