第44章 絆の春
目の前に広がるのどかな春の風景に、小雪は目を奪われ、ぼうっとまわりを見回した。
その小雪の耳に、懐かしい声が届く。
「……………未来を信じるんだ。そうすればきっと、春は来る。
小雪は、春になったらどうしたい?」
その言葉の後、虹の氷壁の真ん中に、幼い小雪の、巨大な立体映像が現れた。
「うーん………小雪はね、お姫様になるの。優しくて、強くて………正義の味方のお姫様!」
「はははっ、そりゃ大変だなぁ………」
幼い小雪の宣言に、早雪が苦笑する声がした。
だがその声は、どこか嬉しそうでもあった。
「………私、あんなこと言ってたんだ………」
小雪は忘れていた父との会話を聞いて、涙腺が緩んできた。
「でも、諦めないでずうっと信じていれば、なれるさ。」
そして、立体映像の中に、早雪が現れ、幼い小雪の首に、六角水晶をぶら下げた。
「ほら、ここに見えるだろ?とってもきれいなお姫様が。」
映像の中の早雪はそう言って、幼い小雪の肩をポンと叩いた。
「っ………父上っ…………」
(私………ずっと、忘れてた………)
小雪の涙腺が決壊し、目から涙が溢れた。
「………………」
(小雪さん………よかった。)
ルナはそんな小雪に何も言わず、ただ側に立っていた。
「でもね、小雪、一つ迷ってるのがあるの!」
「なんだい?」
「あのね、女優さん!」
幼い小雪が、無邪気に笑う。
「んん?はっはっはっはっは…………」
娘のもう一つの夢を聞いて、映像の中の早雪が、楽しそうに、明るく笑った。
「あっはっはっはっはっは……………」
(父上…………春を、ありがとう。)
小雪はそれを見て、泣きながらも、明るく笑っていた。
(ふぅ〜…………色々あったけど、死者は出てないし、まあ、これでよかったんじゃ…………ってあれ?)
ルナは今回の任務の色々を思い出していて、重大なことに気がついてしまった。
(あああぁあー!結局、私がナルトの見せ場、全部持ってっちゃったー!
これじゃ、小雪さんにとってナルトは、ただの煩いガキのまま………
………最初は、ナルトに小雪さんの気持ちを変えてもらおうと思ってたのに、いざ小雪さんに会ったらつい夢中になって………
…………ナルト、ごめん。)
ルナは自分の適当さに呆れ、小さく溜息を吐いた。