第44章 絆の春
飛行船から少し離れたところ、虹の氷壁の中心には、六角水晶を嵌めるための鍵穴があった。
ルナは小雪をその前に連れて来ると、その鍵穴を指差した。
「さあ、小雪さん、この鍵穴へ、六角水晶を嵌めて下さい。嵌めればきっと………
お父様が、小雪さんに何を遺したのか、わかると思いますよ。」
(とか言って、今小雪さんが持ってるのは本物じゃないんだけどね〜………一応知らないフリしとこ…………)
「ええ。わかったわ………」
小雪がそう言ってペンダントを外そうとしたとき、カカシが慌ててやって来た。
「あー、すみません。こっちが本物です…………ドトウに狙われているとわかっていたので、すり替えておいたんです。」
カカシはそう言って、小雪の掌に六角水晶を乗せた。
それにルナ以外の皆が驚き、ナルト、サクラ、サスケは話について行けず、頭上に疑問符を浮かべていた。
「………だ、そうです、小雪さん。まあ、この際ですから、あまり気にしないで下さい。
では、今度こそ、その鍵穴に、六角水晶を…………」
「ええ…………」
小雪はルナに頷き、六角水晶を鍵穴に嵌め、カチリと回した。
その途端、鍵穴がある小さな東屋から光が溢れ、それが虹の氷壁に伝わって、七色に輝いた。
「これは………」
昔父から聞いた、七色に輝く虹の氷壁を見て、小雪は小さく呟いた。
それから間も無くして、厚く張っていた氷が溶け、岩場が露出していく。
雪解け水が小川を作って、岩の隙間を、チョロチョロと流れていった。
「あたたかい…………これは…………」
「…………そう、春です。ほら!」
小雪の言葉の先を続け、ルナは虹の氷壁を指差して、指先に生成した氷礫を勢いよく発射し、その表面に張っていた氷にヒビを入れた。
そのヒビが広がって、厚い氷が崩れ落ちたと同時に、虹の氷壁が一層強く光り、あたりには春の野山と湖が広がっていた。