第44章 絆の春
ルナが小雪をドトウの前に連れて来ると、ドトウはぐったりしたまま、やっとのことで口を開いた。
「小雪……………済まなかった………お前の父を……早雪を殺したこと………この国をお前から奪ったこと……
…………お前の命を狙ったこと……………お前を拐おうとしたこと…………今までの全てを、詫びる…………」
「……………」
小雪はドトウの弱々しい謝罪に、どう反応していいかわからず、沈黙を保っていた。
(にゃははははは!ドトウってば、あんなに怯えちゃって、面白ーい!)
その横では、ルナが機嫌良さげに、ニコニコしていた。
「…………済まなかった………許してくれ……………頼む……………」
ドトウが涙を浮かべて、小雪に嘆願する。
巨大不男が小雪に許しを乞うているのは、かなりみっともなかった。
小雪もそう思ったようで、憎しみよりも、軽蔑の篭った目で、ドトウを見つめていた。
「……………だ、そうですよ?小雪さん、あなたは、ドトウをどうしたいですか?」
小雪がずっと黙っていたため、ルナが声をかけた。
ドトウを殺せと命令すれば、ルナは必ずそれを実行するとわかっていた小雪は、目を輝かせているルナと、
ドトウの情けない顔を見比べて、口を開いた。
「…………もう、いいわ。レイ、こいつを殺さないで。」
(そう………あなたが、こんな奴の血で手を汚すところを、見たくないの。)
気がついたときには、小雪はあんなに憎んだドトウを殺すことよりも、ルナに人を殺させないことを優先していた。
ルナはそれを聞いて、少し残念な気分になったが、それを顔には出さなかった。
「…………そうですか。わかりました。」
そしてルナは小雪に優しく笑いかけて、もう一度手を差し出した。
「…………では、行きましょうか。小雪さんとお父様の、約束の地へ。」
「約束の………地?」
ルナの言っていることの意味がわからず、小雪は首を傾げた。
「ええ!さあ!」
ルナは小雪の手を取ると、飛行船の外へ導いた。