第43章 救済は新たな暴虐へ
そして、ドトウの前歯が3cmくらい開いたところで、ルナはドトウから素早く唇を離した。
「ドトウさん………スキあり♡」
「なっ………」
ルナはにやりと笑うと、手に持っていたドトウの肉片を、ドトウが口を閉じるより早く、ドトウの口の中に押し込んだ。
そして、その口を手で塞いで、何が何でも飲み込ませようとする。
「もがっ………」
「ほらほらぁ、ドトウさん、早く飲み込まないと、窒息しちゃいますよぉ〜……………ね?」
(ほら食え!絶望を味わえ〜!)
必死に吐き出そうとするドトウに、ルナが耳元で囁く。
その声はとても甘いのに、その内容は、ドトウを絶望させるには十分なものだった。
「………もがっ………もぐぅ…………」
やがて、ドトウは観念したのか、涙ながらに自分の腕の肉を咀嚼し、飲み込んだ。
ゴクリ、と喉仏が動くのが、ルナにも見えた。
「あははははははははははははははははっ!
ドトウさん、よくできました!」
ルナはブルブルと震えているドトウを見て、嬉しそうに手を叩き、窓の外を見た。
丁度、虹の氷壁が見えて来たところだった。
(サスケ達が来るのは、あと十分くらい後だろうな〜…………頃合いだな。)
ルナはそろそろ地上に降りることにして、ドトウの方を向いた。
「さて、そろそろ小雪さんとご対面ですよ〜、準備は良いですか?
あなたが死ぬか、生かされるかどうかは、小雪さんの意思一つで決まってしまうんですからね!」
(磁遁・磁界操作!)
ルナは磁遁を発動させると、自分が今乗っている飛行船を、強力な磁力で、下へ下へと引っ張った。
飛行船の浮力は磁遁の引力に負けて、急速に高度を落としていった。