第43章 救済は新たな暴虐へ
地上に到着すると、ルナは飛行船の外に出て、風遁・風刃之舞でその風船部分を真一文字に切り裂いた。
風船部分からヘリウムガスが漏れ、飛行船は完全に、その浮力を失った。
小雪を待つ準備が出来たと思ったルナは、ドトウに目隠しと猿轡をして縄でぐるぐる巻きにし、金縛りの術を解いた。
「さてさて、これでよし。あとは、隙を見て影分身と入れ替われば…………って…………」
ルナはそこで、自分の身体がドトウの血だらけになっていることに気がついた。
(あー!忘れてた!どうしよう…………これじゃ、影分身と入れ替わるなんて無理じゃん!
………あ、そうだ!前に作った、サバイバル用のあれを使えば…………)
いいアイディアが浮かんだルナは、まず木遁で風呂桶を作り、それから他の術を使った。
(沸遁・温水噴射!)
ルナの手の先から、40℃ほどのお湯が噴射され、みるみるうちに風呂桶はいっぱいになった。
ルナは汚れた服も一緒に洗いたかったため、服を脱がずに湯に浸かった。
すると、ルナの服から血が溶け出して、湯はすぐに真っ赤になった。
「あ〜、あったかーい、気持ちいー……………」
ルナは小さく呟き、全身の汚れを洗い流したのを確認すると、湯から上がった。
そして、風呂桶をひっくり返して湯を適当に流すと、それを豪火球で燃やし、処分した。
それから風遁を使って、自分の周りを取り巻く気流を作り、身体を乾かした。
「……………さてと。これでよし。ドトウさん、あと数分で、小雪さん来ますよ!精々頑張って下さいね!」
ルナは小さく呻いているドトウにドトウのマントを羽織らせ、そう言い放つと、
飛行船の外に出て迷彩隠れの術を使い、小雪達を待ち受けた。