第43章 救済は新たな暴虐へ
「では、六角水晶を渡してもらおうか。」
ドトウがニヤニヤと笑い、ルナに手を差し出す。
ルナは黙ってポケットを漁り、例の自作水晶を取り出して、ドトウに渡した。
「おお………!」
ドトウはルナから受け取った水晶の美しさと、本物の水晶の重みや冷たさに、溜息をこぼした。
「確かに受け取ったぞ。ご苦労だったな、小雪。」
ドトウは偽物を見抜けなかったようで、そう言って満足そうに笑った。
「…………これで、お前の役目は終わりだ。」
バシンッ!
そして次の瞬間、ルナの頰を殴り付けた。
「っ………」
ルナはそれを避けず、顔で受け止めた。
飛行船が虹の氷壁に着くまでまだ少しあるため、少し時間稼ぎをしたかったからだ。
それに、痛みを感じても怪我をしても、どうせすぐに治るからだ。
ドトウは抵抗しないルナに調子に乗ったのか、更に暴力を振るってきた。
パシンッ!………バシンッ!………バシンッ!…………
無抵抗のルナの胸倉を掴み、何度も何度も、その白い頰を叩く。
そのドトウの顔はニヤニヤしていて、完全にルナをいたぶることを楽しんでいた。
ルナはというと、表情はボーッとしたまま、サスケ達のチャクラの位置に神経を配り、正体を明かすタイミングを伺っていた。
ドガッ!
顔を殴るのに飽きたのか、ドトウは座っていたルナを立たせ、今度は腹に膝蹴りを入れて来た。
「ぐっ……あっ…………」
巨大不男のそれをモロに受けたルナは、低く呻き、床に倒れた。
(まだ………まだ、我慢しなきゃ。ここからだと、虹の氷壁には遠いし。
まっすぐサスケ達のところに行くと、感知能力あるのが、カカシ先生にバレるし。それに………………
…………………こうしてドトウに殴られてると、後々嬲りがいがあるしね。
にしても、本物の小雪さんをドトウに近づけなくて、本当に良かった。
小雪さんが殴られないで済んだと思えば、こんなのどうってことないよ〜)
ルナは、自分が痛い思いをすることは、なんとも思っておらず、むしろ、他人の痛みを肩代わりできることに喜びを感じていた。