第43章 救済は新たな暴虐へ
そして雪原に残ったルナとルナの影分身は、面白がっているような顔で頷き合い、カカシが背中を見せた刹那、
ルナ本体は小雪の姿に変化し、影分身は皇レイの姿に変化した。
「……………じゃ、いい演技期待してるよ、大根女優さん!」
ルナは影分身の耳元に口を寄せ、こそこそと囁いた。
「…………それはお互い様でしょ。まあ、努力はするけどね。」
影分身はいつものルナの仕草で、呆れたようにやれやれと首を振った。
「じゃ、ほら、早く。怪しまれないうちに。」
「わかってるって。じゃ、行ってらっしゃい!」
二人のルナは楽しげに笑い合うと、影分身はカカシの方に向かい、ルナはその場に残った。
そして、小雪と三太夫を隠し終わった七班五人とルナの影分身は、雪原に立って、ドドウを待ちうけた。
ブオオオオオオオォ…………………
やがて、何かが風を切る音がして、ドドウの飛行船が姿を現した。
搭乗スペースの扉が開き、ナルシスト・ナダレが出て来る。
ナダレは小雪の姿をしているルナを見つけると、ロボットアームのような道具を使って、ルナを捕らえた。
(さあ………………宴の始まりだね、ドトウ…………)
ルナはカカシ達から引き離される一瞬、にやりと笑って、素直に連行された。
続いて、飛行船から何か道具が縛り付けてあるクナイがパラパラと撒かれる。
「風遁・烈風掌!」
ルナの影分身はパチンと手を叩いて突風を起こし、飛行船からカカシ達に向かって発射されたクナイを吹き飛ばす。
雪面に着弾したそれは、瞬間的に幾つもの鋭い氷柱を作り出した。
ドトウはそれに対しては大して気にしなかったようで、搭乗スペースの扉が閉じ、飛行船は飛び去った。